江副学園 言語教育研究所ろう教育部門 個人学習支援コース

勉強につまずく原因は子どもごとに皆ちがう

■ 言語教育研究所ろう教育部門の基本的考え方

聞こえない子どもたちが置かれている状況については様々な考え方があります。補聴器や人工内耳を装用して音声言語を習得する立場もあれば、手話を積極的に使用する立場もあります。また、手話についても対応手話を使用する立場と日本手話という独自の手話を重視する立場もあります。

「言語に関する教育について研究する」という本研究所の趣旨から、ろう教育部門としては、聞こえない子ども・聞こえにくい子どもの置かれている状況の多様さとそれぞれの立場の価値観、相互の関係はそれ自体、意味のあるものとして認識した上で、その中の特定の立場を優先的に評価するのではなく、各家庭が選択した状況の多様な現実を尊重し、それぞれの立場を認めて、各自の選択状況に準じた対応をします。

ただし、以下に記す、書記日本語(日本語の読み書き)と論理的思考力の重視という観点は多様な選択肢のすべてに共通した大切なものであると考えます。

■ 個人学習支援コースの目的

聞こえない子どもたち・聞こえにくい子どもたちは日々の暮らしの中でコミュニケーションについて様々な困難を抱えています。

また、学校における学習場面で、そのコミュニケーションの困難さのため、勉強がわからなくなり、自信や意欲を失っていくことも少なくありません。

本コースはそうした問題を抱えた聞こえない子ども・聞こえにくい子どもたちの学習の問題点を改善することを目的としています。

■ 個人学習支援コースの指導理念

本コースの学習支援では子どもが通学している学校における教科学習の内容理解を基本とした上で、独自に以下の2点を特に重視して指導します。

① 書記日本語(日本語の読み書き)能力の育成

書記日本語の能力はすべての教科学習を理解する上で基盤となるものです。なぜなら教科学習は教科書を使って指導されるものだからであり、教科書は日本語の文章で情報を説明してあるからです。日本語の文章を読んで、その内容が正確に理解できなければ、どんな教科もわからなくなってしまいます。

また、書記日本語の能力は中学や高校に進学した後の教科学習理解にも引き続き大きく影響する根本要素です。

① 論理的思考力の育成

自立した人間として生きていく上で、ものごとを常に落ち着いて、粘り強く、論理的に考える力は欠くことのできない大切な支えです。その力を子どもの時から少しずつ育んでいければ、大人になってからも、聞こえない人間・聞こえにくい人間として、自分らしく、自信を持って生きていけるでしょう。

ですから、教科学習の内容を理解する、そのこと自体が勉強の最終目的ではありません。算数や国語や英語等の教科学習は、その勉強を通して、ものを考える力(論理的思考力)を身につけるためにあるものと考えます。本コースの学習支援はその点をしっかり踏まえて実施します。生きていく上での思考力の基礎を育成する、それが支援の真の目的です。

■ 支援対象児

原則として一般校、あるいは聾学校に通学している小学生、中学生を対象とします。

(就学前の乳幼児については別途コースがありますので、そちらを御検討ください。高校生については相談してください。)

■ 聞こえない子どもの学習支援はどうあるべきか

□ 勉強のわからなさの原因は子どもごとに違います

勉強がわからなくなる原因には様々な要素が関係しています。そして、その原因は子どもによって皆ちがいます。

□ わからなさの原因は以前の段階の理解不足から生じています

「ある日、突然、勉強がわからなくなる」ということは実際はほとんどありません。以前にあった小さな「わからなさ」が少しずつ積み重なっていき、ある日、気づくと、大きな問題になっていることがしばしばです。

ですから、いくら目の前の勉強だけをどうにかしようとしても抜本的な解決にはなりません。勉強はすべて「積み重ね」であり、相互に密接に関連している以上、以前の段階に理解不足の部分があれば、そこまで戻って、そこから粘り強く、きちんとやり直すことが必要であり、最も大切な対応の仕方です。「急がば回れ」です。

□ わからなさの原因は言語力と関係しています(日本語力の問題)

教科学習についての理解不足は多くの場合、言語力の不足から生じています。教科学習の内容は教科書というテキストを通して教えられ、そのテキストは日本語という言葉で書いてあり、それを読んで理解することが教科学習の前提だからです。

また、教室での先生の説明や質疑も多くの場合、日本語で行われています。日本語力が年齢相応のレベルに達していない場合は、これらの指導の内容をきちんと吸収することが出来なくなります。

ここで言う「日本語力」とは具体的に言えば、「日本語に関する知識」と「日本語の使い方の規則」、つまり語彙と文法ということです。聞こえない子どもの場合、音声からの日本語の習得に困難が伴うため、この語彙と文法の両面に関し、不足が生じがちです。その結果、通常の教科学習にも困難が生じやすくなります。指導する際は、そのような聞こえない子ども独自の言語習得の難しさという事情もしっかり認識して対応する必要があります。手話や指文字、絵、図という視覚的方法の活用が意味を持つのはそのためです。

□ 集団指導の限界と個別指導の利点

以上のような一人一人の子どもの持つ問題点を個別にきちんと把握して、その子どもに合わせた(オーダーメイドの)的確な支援指導をすることは集団指導では困難です。

勉強に問題を抱えた聞こえない子ども特有の状況に対する専門的な知識と、それを改善する実践的な指導技術がなければ適切な学習支援は不可能です。

本コースでは聴覚障害児教育の研究的実績と実践指導の経験のある講師が学習支援を担当します。

■ 支援指導内容

小学校・中学校の教科学習内容(国語・算数・数学・英語)の復習、予習、補習、受験準備、等

書記日本語(文法理解と語彙形成、読解と作文)

※文法指導については江副式文法指導法を活用します。

■ 個人指導料(月謝)

1回90分(週2回/月8回)

月60,000円(消費税別)

■ 指導場所

江副学園言語教育研究所(高田馬場・新宿日本語学校)JR高田馬場駅 徒歩5分

※家庭訪問指導を希望される場合はその旨、ご相談ください。

■ 担当講師

言語教育研究所ろう教育部門室長 上農正剛(うえのう・せいごう)

経歴

1982年~1999年 東京にて難聴児学習個人指導教室運営

1999年~2020年 九州保健福祉大学社会福祉学部・大学院社会福祉学研究科教授

2020年~     江副学園 言語教育研究所 ろう教育部門室長

学歴

立命館大学大学院先端学術研究科博士課程修了 博士(学術)

著書

『たったひとりのクレオール-聴覚障害児教育における言語論と障害認識』他、論文多数。

講演活動

全日本ろう教育研究大会、日本手話学会、全国聴覚障害教職員協議会、等での記念基調講演、全国の聾学校での研修会講師、全国難聴児を持つ親の会等での講演多数。

■ 事前面談の予約申し込み

※指導の詳細については保護者面談により説明します。また、相談内容については、その際、お伺いします。まず、下記の「面談予約申し込み書」のフォームに必要事項を記入し、それをメールで送信してください。